1 ガンダム大地に立つ!!
記念すべきシリーズ第一作の第一回。そこらへんなんか自然とガンダムに乗り込んじゃいます。
https://gyazo.com/968e5669895a138dcbef0f82bf7bfef1
昔っから思ってたんだけど、もえあがったらまずいだろう.....。
https://gyazo.com/ea2f42e9ebc45e784d2f512b933df8c5
富野由悠季、まだ「富野喜幸」名義になってる。今、Netflixでは「13+暴力」だが、当時の掲載誌はなんとたのしい幼稚園......。ギャップがすごい。
https://gyazo.com/6bf35cdb2b03a8d34c1c7384637e8e06
機動戦士ガンダムの項でも説明したが、この「どちらが正義でどちらが悪か一概に言えない」がガンダムの一大テーマと言ってもいいくらいなのだが、オープニングの歌詞は「正義の怒りをぶつけろガンダム」。こんな皮肉もなかなかない。このテーマ曲を歌っているのは池田鴻である。
歌詞は「井荻麟」。誰やと思って調べたら、富野由悠季の変名だそう。
井荻麟とは、日本の作詞家。またの名を富野由悠季。(......)なお、名前の由来はかつてサンライズの事務所の最寄り駅の上井草駅が西武新宿線井荻駅の隣であった事から。ちなみに井荻駅はシャフトの事務所の最寄り駅で化物語のひたぎクラブ編OPにも出てくる。https://dic.pixiv.net/a/井荻麟
https://gyazo.com/7795cc4ba28bb7201e2e5b26a18ff86f
オープニング終って一発目このアングルがすごい。何見せられてるのかわかんないのだが、「分かんないものを見せられてる」、そしてそのわかんないものこそがコロニーなのだということが非常によくわかるシーン。うつってる対象もだが、これはどこからのカメラなのか。疑問が疑問を呼ぶのだが、同時に「たのしい幼稚園」連載とは思えないハードコアでハードボイルドな(「人々は、そこで子を産み育てそして死んでいった」)ナレーションが続く。
宇宙世紀0079年というのが時代設定になる。機動戦士ガンダムは1979年発表なので、当時はBCとUCが下二桁同じでわかりやすかった。1979年はエイリアンの公開年とも同じである。この頃要するに宇宙=エリートの宇宙飛行士、選ばれた人類だけが体験できる夢・理想ではなく、むしろ逆に「低賃労働者や被差別者がおしつけられるリスクだらけの世界」という想像力が登場している点もおさえておきたい。
地球から最も遠い人工都市がサイド3。で、このサイド3がジオン公国を名乗り、地球連邦政府に独立戦争を挑んできた、とナレーションが入るのだが、もうこの時点で、旧世界vs新世界の争いだと言っていて、要するにジオン=悪者ではない。どころか、民族自決の原則から行けば、むしろ連邦政府のほうが体制側、抑圧者である。
たった1か月の戦争でどちらも総人口の半分が死んだと言ってる。さすがに死者数が多すぎないか??? その後、描かれる生活は戦争の被害に比べると豊かそうなのだが.....。
そして戦争は膠着状態に入り8か月あまり続いた.....というところから物語は始まる。オープニングからカロリー高えな。おなかいっぱいである。
https://gyazo.com/faa4080a14becdb191fd625e81fb895b
次のシーンもものすごくかっこいいし説明がうまいのよ。まずは地球。次に隕石。これは後に月の近くに資源採掘用として持ってこられたものだと説明されるのだが、左から右にカメラが平行にスクロールしていく。
その後、太陽が映り、何もない宇宙空間が映し出される。この時点で3つの物体の「見える」大きさが異なることから、逆に「どこにカメラがあるのか」が理解できるようになってる。
https://gyazo.com/c766e165e1f72a75bf962d6686a304a9
そして、下からザクがせりあがってきて、カメラに向かって近づいてくる。ザクの赤いモノアイが地球や太陽よりも大きくなる。そしてザクは左に、つまり地球(の方角にあるサイド7)に向かっていく。地球よりも太陽よりもザクのモノアイが大きい。ここの描写がむちゃくちゃセンスある。
https://gyazo.com/d8aa9e87046ff51873f99c128ed37090
ザクでつまみをつまむwww ふざけてんのか?と思うが、ここは「モビルスーツの操作ってこれくらいできるものなんですよ」という説明のためにあえて入れたと思いたい。
https://gyazo.com/b063a863fcce0a6166100caee369447b
フラウ・ボゥが話しかけてるのに一切答えない。軍の避難命令も聞こえてない。用意してもらった朝食も食べない。着替えもしない。【それなのに】ハロの呼びかけには「ハロ、今日も元気だね」と答える。アムロの説明としてこれ以上わかりやすい説明がない。人と話すより機械と話すほうがラクだし、一度集中したら寝食忘れて一つのことに没頭してしまう。現代日本社会だったら発達障害と診断されてもおかしくない。それがアムロ・レイなのだ。
ここの描写本当にすごくて。だって、これからガンダムに乗って戦うヒーローの初登場シーンがパンツ一丁で顕微鏡ですよ? こいつが誰なのか具体的な説明の前に「パンツはブリーフではなくトランクス派です」。すごい思い切りの良さ。ガンダムが名作とされるのもよくわかる。
フラウ・ボウの説明にもなってる。こんなアムロに対してやってることがほとんど押しかけ女房。トランクスいっちょの姿を見てもなーーーーんも思わない。幼馴染で二人は結婚するんだという暗示のようにも読めるし、「性的な関係など始まりようがない」という説明のようにも思える。てか、フラウ・ボウ(Fraw Bow)って名前もフラウ=ドイツ語で「女」「婦人」って意味だから「女さん」みたいな命名で引っかかる。そしてそれ以上に「Fraw」って綴りなら「フロー」だろうってツッコミたくなる。
https://gyazo.com/d289877fbc821566f5e149475c6abf85
ハヤト・コバヤシ初登場。ここも一気に関係性やキャラクターの説明が済んでる。隣なのにアムロに避難命令のことを教えられない、それくらいの距離感であること。アムロの父親テム・レイがサイド7に来たことで立ち退きさせられたこと。そして何よりこいつはこんな緊急時でも柔道着だけは持っていく。空手バカ一代ならぬ柔道バカ一代だってこと。そして、柔道は大好きだけど、軍事技術者を好まない=争いが嫌いな優しい性格であること。
アムロとの距離感に他の関係性も読み取れる。たとえばハヤトがスペースノイド(地球外出身者)で、アムロはアースノイド(地球出身者)という距離感かもしれないし、アムロもスペースノイドなら、同じスペースノイド同士でも軍事関係者と一般市民での階層や階級格差のようなものの描写かもしれない。
https://gyazo.com/bb6df1cffe18f6a545212c8d319999f1
ブライト・ノア登場。軍務に就いてまだたったの6か月で、この時点で19歳。アムロの父親テム・レイに対しアムロは「父親は何も教えてくれない」と不満そう&反抗心を示しているが、当の父親は、ブライトやアムロのような若者がもう戦争にでなくてもいいように=戦争を終結させ子どもたちの命を守るためにガンダムを開発した。結果、アムロはガンダムに乗って戦うことになるわけだから、皮肉な話だ。
このシーンもシンプルであっさりしているが、実は情報量は濃い。アムロの写真を飾っているということは、父親はアムロのことを常に思っている、気にかけている、だからこそ「何も話さない」のだが、それをアムロは不満に思っているということ(親の心子知らず)。そして子どもの写真は飾るが妻の写真はない、夫婦の間には決定的な決裂があったと推測されること。
「ガンダムが量産されるようになれば(......)戦争も終わろう」とテムは言うのだが、量産???まったくテムの思った通りに未来はなっていかないことを暗示してる。
あくまで戦争を終わらせる、子どもの命を守るといった実務的な目的でロボットをつくり研究を重ねる父親に対し、ただただ興味関心だけでメカニックをしている息子といった対比も見られる。
ジオン軍のジーンという若者の偵察兵が、手柄をあせってザクに乗り、研究施設を襲撃する。これも地味だけど、後と比べると大事な描写なのだが、ビームライフルの引き金を引くのにジーンは一切躊躇がない。アムロは人を撃つことにめちゃくちゃ躊躇するのに.....。中に人が乗っていたと思われる、つまり人が確実に死んだという描写もなされてる。
ちなみにこの時の偵察兵の名前がデニム、ジーン、スレンダー。ジーンズかよと。
https://gyazo.com/7ec868a341ccb167f3e45617149b51ec
さっき目の前で軍隊が殺されたのに、そして避難カプセルではダメだと空港に急ぐ民間人の横で、ガンダムの説明書を拾って読みふけってしまうアムロ。「教育型タイプ」というのがガンダムのコンセプトらしい。「型タイプ」ってツッコミ入れたくなるが。
https://gyazo.com/2832f4edf37c4a2fea248560965bce11
第三リフトを使ってガンダムをホワイトベースに運べ、避難民よりガンダムが先だと言うテム。「人間よりモビルスーツが大事なんですか」と父親に詰め寄るアムロだが、まったく返事せず「早くホワイトベースに避難しろ」とだけ言う父親。アムロと父親は話しかけてもぜんぜんちゃんと答えないところがとても良く似ている。
https://gyazo.com/45baa3fd23d9afdc916e9d78aa50b783
アムロの方角に走ったことで、フラウボゥだけ生き残り、家族はみな爆撃で殺されてしまう。この作品、ガンダムシリーズ。とにかく人が人をよく殴る。これが記念すべき第一殴り。
ガンダムシリーズの女性像は実は結構複雑で面倒。性別役割分業も強いが他方で「強い女の子じゃないか」など、女の子=強いといった「今どき」の表象も入れていこうとしている。
https://gyazo.com/2f0bd4310c0b29d42d5535cbaafe5752
エンディングテーマでは男は涙を見せぬものと歌われるアムロだが、第一話から思いっきり泣いてる。
https://gyazo.com/6dd280cd9dcd4c16eb86484a351f80b7
ここもすごくいいシーン。「おびえていやがるぜ、このモビルスーツ」とジーンは言ってガンダムに近づくのだが、その後、ガンダムから銃をグイとはねのけられ、ダクト部分をつかんで引きちぎられて、ジーンのほうがおびえることに。「ビビってるぜこいつ」はビビってる側が言うセリフなのだ。
https://gyazo.com/4fa65ee05a533b352677840aba055ee6
ここもとんでもなくかっこいいシーン。ガンダムの強さを、強さだけでなく「ヤバさ」「恐ろしさ」として描写してるのがすごい。
まずビームや銃ではなく、ビームサーベルで戦うのがかっこいい。空中のザクを真横一文字で斬。他は動かない中、ザクだけがゆっくりと地面に落ちていって、途中で爆発するという演出がむちゃくちゃかっこいい。ビームサーベルはStar Wars(1977)の影響かな。
で、ザクが爆発したことで、
もう一体のザクがふっとぶ
サイド7に爆発で穴があく
テムが爆撃でふっとばされ、その穴から宇宙へ放出されてしまう(死んだ???)
要するにアムロがガンダムに乗ったせいでティム=父親は死んだかもしれないってこと。
https://gyazo.com/42311d13bbdff8decc999f2e00910497
一体目のザク=ジーンを倒した結果、爆撃でサイド7に穴があいてしまった。そこからサイド7の空気がなくなってしまうため、二体目は「コックピットだけを狙えないか」と考えそれを試し成功するアムロ=ガンダム。もうこの時点で「勝ち負け」ではない。強いやつが気にしているのはもうすでに全然違うことだったりする。そういうアムロのヤバさを非常に上手く描写されている。
Next: 2 ガンダム破壊命令へ